I・C メイツ written by かわちん(河津 勇)

年間650万人もの参拝客があるという熱田神宮。その東門、大津通をはさんだ対面にそのお店はあります。

開店は昭和56年。オーナー兼マスターの大矢進さんは御年71歳。
ご実家は名古屋市南区の呉服屋さん。幼少の頃から絵が好きで、その方面で身を立てる夢を抱きつつも、残念ながら挫折。 「これから何をして食べていこうか?」  若き大矢さんが目をつけたのは喫茶店でした。
当時、爆発的に増え始めていた喫茶店経営なら、自分でも出来るかもしれない。
当初はそんな甘い考えだったそうです。

それでも3~4年かけ7~8ものお店でしっかり修行を積んだ大矢さん。
昭和51年。名古屋市中区金山、今はなき、名古屋スポーツガーデンのそばに「I・C金山」というお店をオープンさせます。

折からの喫茶店ブームもあり、大繁盛の同店。当時一杯150円のコーヒーが1日に 300杯も400杯も出たといいますから、凄まじい繁盛ぶりだったことがうかがえます。
勢いに乗った大矢さんは、その後、中区伊勢山に「メイツ」、そして熱田区神宮に「I・Cメイツ」をオープンさせます。(※現在はこのお店のみ営業)

また当時羽振りのよかった大矢さんは、自身が断念した芸術の世界で頑張る若者たちを応援しようと、彼らの作品を買い求め、パトロン役を買ってでます。今でも同店に、何枚もの絵画が飾られていたり、彫像などが置かれているのは、そんな理由からでした。

ところで店名にある「メイツ」。一般的には「仲間」「相棒」「友」と訳されます。
お店を「皆が集まり色んな話のできるサロンのような場所にしたかった」という大矢さんの思いの表れともいえますが、実は「メイツ」には「航海士」という意味もあるそうです。
海(というより海の色の蒼さ)に惹かれ、よく足を運んでいたという若かりし頃の大矢さん。
そこで眺めたであろう数多くの船舶、操舵する航海士への憧れ。いやいや自らの店を構え、これから船出しようとする自身の姿を航海士に見立てていたのかもしれませんね。

さてお店のこだわりは、ファサードにもある「ヨーグルト」と「珈琲」。
昭和51年の開業当時、ヨーグルトの認知、ましてやヨーグルト菌そのものの入手が一般的でなかった時代に、医療器材を使い当初から自家製でスタート(※現在は製造委託)。

そして珈琲。
名古屋の喫茶店好きの方なら、すぐにピンとくるかと思いますが、店名の「I・C」は、名古屋の老舗珈琲卸「イトウ珈琲商会」から拝借。今でも同社の豆を使っています。

長年研究を重ね、辿り着いたのは「(豆は)粗くカット。浅炒りでサラッと落とす。豆を惜しまない」淹れ方。「イトウ珈琲が卸している先で、うちが一番気前よく豆を使っているからね~」そんなセリフも飛び出しました。

名古屋喫茶ですから、当然モーニングもありますが、同店では玉子類はつきません。
その代わりトーストは厚切り。そこにたっぷりのバターを載せて。
「パンはフワッとしているほうが美味しいから」そんなこだわりから厚切りを選んでいるそうです。

また同店には、いわゆる「日替わりランチ」はありませんが、パスタ、ピラフなどの定番はしっかりラインナップ。サンドイッチ、ホットサンドといったパン類も充実しており、メニューに物足りなさを感じることはありません。

残念ながら、提供されている食事についてのこだわりは、詳しくお聞き出来ませんでしたが、前述した珈琲へのこだわりなどから察していただければ、その味に間違いないことは想像に難くはないでしょう。

開店は毎朝7時。常連さんが次々と訪れます。
近隣のオフィスも減って、昔ほどのお客様の数はないとおっしゃいますが、それでも終日、ほどよくお客様も入り、ややレトロさを感じる店内をゆっくりとした時間が流れていきます。

そんな同店も土曜日夕方には、ガラッと様相が変わります。
若きミュージシャンたちに、無料でお店を提供してライブ活動の場にしているのです。
昔若い芸術家を支援したように、現在は若い音楽家を支援したいという大矢さん。
キャパ的には30~40名ほどですが、チケット代で彼らのアパート代くらいの実入りにはなるからねと語ります。

「生活費は、ふだんの営業で稼げれば十分。こうやってお店を続け、若いミュージシャンたちが食べていくための助けになればうれしいし、いろんな人が集まってくるのは楽しいよ。あと10年はやりたいね。」と語る大矢さん。

開店の時に抱いていた「サロンの様な場所にしたい。」との思い。今も健在です

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取材店舗名称 I・Cメイツ (アイシーメイツ)
住所 愛知県名古屋市熱田区神宮3-9-18
電話番号 052-671-1158
営業時間 7:00~19:00
定休日 日曜日
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